Design Center

各国の個性や風土のなかで、クルマは創造されています。

世界中にある日産デザインセンターとはいったいどんな場所で、どのような作業をしているのでしょうか?
アメリカ、イギリス、中国、日本の各施設を取材しました。

写真:エイミー・セイリッグ、渡邊美佐、谷井 功 文:稲石千奈美、香川道子、和田達彦

U.S.A. San Diego アメリカ・サンディエゴ 日本デザインアメリカ(NDA)

1.同僚との話し合いでデザインが磨かれていく。2.デザイナー、ジオバーニが描く力強いデザイン画。3.コンクリート打ち放しのクールな外観。4.本の並べ方もユニーク。

開放的な空間から、コミュニケーションが生まれる。

ロサンゼルスからクルマで2時間の場所サンディエゴ。まっ青な空が広がるこの街で「日産フェアレディZ」「日産アルティマ(ティアナ)」などのデザインが生まれた。アメリカでは中規模というが、広大なスタジオにはビーチバレーコートやBBQスペースまである。だがこの施設でもっとも特徴的なのは、仕切りが少なくスタジオ全体が明るくオープンであること。「開放的だからコミュニケーションが密に築けるのです」とバイスプレジデントの上田太郎。のびやかで自由な自動車デザインは、この環境なしには生まれない。

5.まるでギャラリーのようにアートや家具が配置される廊下。6.スタジオ内の各所に置かれた青い木のアートがスタイリッシュな空間をつくる。

レゾナンス Resonance

デトロイトで開催された今年の北米国際自動車ショーで発表された「レゾナンス」。アメリカでのユーザーを意識したクロスオーバーのコンセプトモデル。

U.K. London イギリス・ロンドン 日本デザインヨーロッパ(NDE)

1.「インフィニティ エマージ」のディテールを決めるバート(右)とポール・レイ(左)。2.受付を飾るのは、展示会で使用したコンセプトカーの型。美しいアート作品のようだ。3.ジュークの車体についてチームで打ち合わせる。

近未来的空間が、クリエイティブな心を刺激。

ロンドンの中心部にある日産デザインヨーロッパは、行政によって建築の保存が指定されている元列車修理場がオフィス。運河沿いにあり、古い倉庫のような外観だが、中に入ると、まるで秘密基地であるかのように雰囲気が変わる。外部の人間を一切シャットアウトした空間であることも、秘密基地感を盛り上げる。

4.1968年に建てられた元列車修理場だったオフィス。

5.宇宙船を想像させるデザインチーム室の内部。

内部は白一色で統一され、SF映画のような近未来的な雰囲気。楕円構造をいかしたドーナツ形のユニークな空間のレイアウトはクリエイティブな心を刺激する。ここから「日産ジューク」や「日産デュアリス」が生まれたのだ。ここで働くデザイナーはロンドンらしく多国籍。異文化が融合する化学反応から、新しいカーデザインが創造されるのだ。

日産ジューク Nissan Juke

日産デュアリス Nissan Dualis

ここ日産デザインヨーロッパでデザインされた2台のSUV。
世界中で愛されるヒットモデルでもある。

CHINA Beijin 中国・北京 日本デザインチャイナ(NDC)

1. 熱い議論が交わされるデザイン検討会の様子。2.サロンのテーブルは、休憩時間には卓球台に変身する。3.日産マーチをベースにした「コンパクトスポーツコンセプト」。4.石材とステンレスを活用したエントランス壁面は、万里の長城をイメージしたもの。

中国の独自文化から生まれる、新時代の息吹。

2年前に開設されたNDCは、現地で採用された中国人デザイナーを中心としたフレッシュな組織が特徴。所在地の北京・朝陽区は、アートギャラリーが集中する798芸術区などがあり、世界的にも注目されている北京の刺激的な文化エリアだ。NDCの設立は、もちろん発展し続ける中国市場を意識したもの。中国では、クルマに求められる価値観のひとつに「大気(ダーチィ)」というものがある。「存在感がある」といった独特な意味合いの言葉だが、このニュアンスを理解し、デザインに反映するのは、中国の文化圏の感性が必要だ。こうした独特の価値観を踏まえつつ、グローバルにも認められるクルマを創造することを目標に、若きデザイナーたちは意欲的に開発に取り組んでいる。

5.スケールモデル制作の様子。フルスケールモデルの制作も可能。

フレンド・ミー Friend-ME

今年の4月に開催された上海モーターショーで初公開された新世代スポーティセダン「フレンド・ミー」。日産にとって、中国人デザイナーが主体となって開発した初めてのコンセプトカーだ。

JAPAN Atsugi 日本・厚木 日産グローバルデザインセンター(NGDC)

1.クレイモデルを制作するモデリングスタジオ。2.開放的な雰囲気のデザインスタジオ。3.ロビーからスタジオへ向かう通路。アシンメトリーなデザインは、キューブのリヤウインドウがモチーフ。

すべての日産デザインは、ここを通して生まれます。

30年以上の歴史を持つ厚木の日産グローバルデザインセンター。かつては4つの独立した建屋から構成されていたが、2006年にひとつの施設としてリニューアル。これは、グローバルブランドとしての一貫性をもたせるためで、全長約300mを超す施設はプロジェクトごとに縦に区画し、横方向でスタジオ全体を見られるように設計されている。

4.ショーカーが展示されているエントランスロビー。

5.テラスのあるインフォギャラリーはスタッフの憩いの場のひとつ。

デザインのための最新設備はもちろんのこと、図書室である「インフォキッチン」、休憩所でありミーティングルームでもあり、ギャラリーにもなる「インフォギャラリー」などの設備も充実。世界の拠点で提案、制作されたデザインも含め、すべての日産デザインはこの場所を通じて世の中に送り出される。まさに司令塔のような場所だ。

日産キューブ Nissan Cube

欧米の若い世代にも受け入れられた日産キューブ。

日産 GT-R Nissan GT-R

オープンコンペを行い、数千のアイデアから選ばれたNissan GT-R。

※本記事は2013年5月23日時点の情報を元に作成されております。

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