たとえば、ひとことで『赤』といってもさまざまな色がある。日産では車種に合わせたボディカラーを数多く用意しているが、これらのクルマの魅力を表現する色を生み出しているのは、カラーデザイナーと呼ばれるスペシャリストたちだ。「車両開発がスタートすると、まずカラーコンセプトを考えます。赤ひとつでも、明るく鮮やかであればスポーティ、ダークで落ち着いた色調ならバーやシアターのようにリッチな雰囲気になります。その車の個性を理解したうえで、お客さまに届けたい想いを大切にして色を創り出しています」とカラーデザイン部の松本。時には、旅先で見た雄大な自然、ショッピング中に発見した雑貨や日常のひとコマからインスピレーションを得ることもあるという。そのカラーデザイナーの感性とこだわりから誕生した、最新の“日産の色”から、いくつかをご紹介しよう。
グローバルデザイン本部
カラーデザイン部アシスタントマネージャー
松本 群太
2003年、日産自動車入社。海外向けの車種のカラーデザイン担当を経て、現在は主にコンパクトカーのカラーデザインを担当。 「長く付き合う愛車ですから、自分の好きな色、ハッピーになれる色を選んでほしいですね」
カラーデザイナーが意見交換を行い、アイデアを練るディスカッションルーム。光の角度によるグラデーションや色味の変化をチェックするパネル状のカラーサンプル、内装に用いられる素材などが、ずらりとディスプレイされている。
イメージどおりの1色を生み出すために、同系色だけでもいくつもの候補が創られるという。カラーデザイナーの仕事場にはミニチュアカーやカラーチップなどが所せましとならぶ。 クルマの個性とのマッチングやトレンド、大切にする質感などを様々な手法やサンプルに落とし込み、実車のカラーデザインへとつなげていく。
「マーチは先々代、先代モデルにもピンク系カラーを設定しており、もはやマーチにピンクは欠かせない、という想いがありました。単なるピンクではなく、新型マーチの洗練されたデザインにいちばん似合い、お乗りいただく方に愛される、柔らかで上質感のあるピンク、という視点で創りました」と松本。
加えて、時代に合った色とすることも開発コンセプトとして掲げている。色彩感覚が豊かな女性はもちろん、たくさんの人に乗ってもらえるような色とし、街を元気に楽しくしたいという願いをこめて、ファッショナブルでハッピーになれる色を目指したという。
ナデシコの花。その日本的で可憐な佇まいは、開発にあたってのヒントとなった。柔らかな色調が洗練されたデザインにマッチする。
フェアレディZのプレミアムサンフレアオレンジは開発にあたって、3つのキーワードを意識したという。
それはスポーツカーらしい活力を感じさせる「Energetic(エナジェティック)」、40年を超えるフェアレディZの歴史を意識した「Heritage(ヘリテージ)」、そして熟成と大人っぽさを意味する「Matured(マチュアード)」だったと松本は説明。フェアレディZの連綿と受け継いできた歴史を感じさせるオレンジの色調を使い、豊かなボディの躍動感を強調すると共にブランデーやワインのような深みを表現している。
マグマや太陽のフレアが題材となった。内に秘めたパワー、エネルギーはスポーツカーに通じる要素である。
※本記事は2013年10月29日時点の情報を元に作成されております。