リチウムイオンバッテリー開発者 矢島和男 自ら電池を開発することで、高い信頼性を実現しました。
電気自動車のパフォーマンスを大きく左右するのが電池技術です。日産リーフに搭載されるリチウムイオンバッテリーは、安全性や信頼性を徹底的に追求し日産が自社開発しました。
電気自動車はこれまでとまったく違う発想をもとに、クルマを進化させるポテンシャルをもっています。それを引き出すチャレンジを積極的に行いたいですね。
KAZUO YAJIMA 矢島和男リチウムイオンバッテリー開発者
EV・HEV技術開発本部 アライアンス グローバル ダイレクター
1990年入社。材料研究を行ったのち、さまざまな部署で経験を積み、2009年4月に日産リーフの電池開発を担当。以来、リチウムイオンバッテリーに関わる。子どもの頃から大のクルマ好きで、知らないクルマがなかったほど。入社した頃に登場したGT-R R32型の印象が強く心に残っている。
日産リーフをはじめ、電気自動車やハイブリッドモデルのリチウムイオンバッテリーの開発を統括する矢島和男。大学で専攻した材料化学に関わる研究に従事したのち、車両開発からマーケティング部署まで幅広く身を置き、海外での勤務も長い。エンジニアという枠にとどまらない豊富な経験が、柔軟な考え方を育み、現在の職務にもおおいに役立っているという。そんな矢島が日産リーフの電池開発を任されたのは2009年4月のこと。そのわずか4カ月後に正式発表が行われ、翌年の12月に販売開始を控えているというタイトなスケジュールのなかで、搭載するリチウムイオンバッテリーの最終的な仕様を決定し、量産体制を整えるというのが、矢島に託された仕事だった。ハードルは高かったが、信頼性、安全性の確保においてはけっして妥協しないと、プロジェクトに関わった者すべてがこだわり続け、日産リーフが世に送り出された。それから5年が経ち、19万台以上*1が販売されたが、バッテリーを原因とする重大なトラブルは1件も発生していない。
高い信頼性を実現することができた理由を問うと、矢島は自動車メーカー自らが、リチウムイオンバッテリーの開発を行ったことを真っ先に挙げた。日産リーフのそれは、ラミネートセル構造を採用し、このセルを4枚重ねてひとつのモジュールを構成。さらに48個のモジュールが直列で接続され、金属ケースに収めたバッテリーパックとなる。このような階層的に守られる構造を採用するとともに、頑強なバッテリーパックはそれ自体がクルマの構造物として剛性を担う。要求される性能を満たし、クルマと一体化するような設計は、日産が電池づくりを一から行うことで実現できたものだ。さらに、日産リーフは情報通信技術を活用してデータセンターと24時間つながっていることも、信頼性を大きく高めているという。走行中でもガレージに収まっている時でも、つねにクルマやバッテリーの状態を把握しているから、トラブルを未然に防ぐことができるのだ。こうしたシステムの構築も、バッテリーの開発を日産が行っているからこそ。さらに蓄積されたデータは今後の開発にも活かされ、電気自動車の進化につながっている。
大容量バッテリーを採用し、さらに安全装備も充実。日産 リーフ
新たにエマージェンシーブレーキ*2*3を全車標準装備し安全性を向上、さらにEV-ITの利便性を高めた新型日産リーフ。エネルギー密度の高いバッテリーの搭載で航続距離を延ばしたモデルを設定し、ボディカラーの新色追加も行った。
- *1 2015年10月末時点 日産調べ。
- *2 安全装備はドライバーの安全運転を補助するものであり、あらゆる状況での衝突を回避するものではありません。システムの能力には限界があり、天候や路面状況などによっては作動しないことがありますので、システムだけに頼った運転はせず、天候や路面状況に合わせた運転、周囲の車両・歩行者の確認、十分な車間距離の確保など、安全運転を心がけてください。
先進技術・機能の設定条件は、車種・グレードにより異なります。 - *3 日産リーフのエマージェンシーブレーキは、約10〜80km/hの範囲で作動します。歩行者に対しては、約60km/h以上では作動しません。また約30km/h以下で衝突回避の能力があります。詳しくはカーライフアドバイザーまでお問い合わせください。
※本記事は2015年12月2日時点の情報を元に作成されております。