[TAKUMI] BACK TO TOP >

    more

    扉ページへ戻る >

    日産の匠たち。

    TAKUMI 山中 幸二 Koji Yamanaka 実験技術開発本部 車両実験部 コンポーネント信頼性実験グループ

    想像力をフルに発揮、盗難から愛車を守る。

    近年、世界中で問題となっているのが車両盗難の増加だ。
    そんな状況にあって、日産車の防犯性能は世界的にも高く評価されている。
    この背景には、経験と想像力を駆使して犯罪と戦う、ひとりの匠の存在がある。

    感性を研ぎ澄ますことで盗難を防ぐ

    教科書はないから自分の頭で考える

    日産車を"壊す"ことが、山中幸二の仕事の一部だ。実験技術開発本部に所属する彼の工具箱には、ドライバーが入っている。けれども、このドライバーで車両を組み立てるわけではない。ドアの鍵穴などにねじ込み、鍵を破壊するために使うのだ。山中は、「盗まれにくいクルマを開発するのが私の仕事です」と語る。そのために、本当に盗まれにくいかどうかを自分の手で確認するのだ。
    「ドアとガラス窓の隙間、鍵穴、ボンネット、給油口のフタ、それにトランクなど、開閉する場所すべてを自分の手でチェックします」山中と車両盗難との戦いは、コンピュータの画面上から始まる。
    「3D画像で、たとえば "この隙間からボンネットが開けられる" といった弱点を見つけるのです」ここで、1982年に入社以来ボディ開発に携わり、構造を知り尽くす山中の知識と経験が活かされる。3D画像で見つけた弱点を修正すると、実車でのテストだ。「難しいのは、高度になっていく車両盗難の手口を先回りして対応することです」と山中は言う。

    「最近増えた、鍵穴を根こそぎ取り外す手口は、私が担当になった10年前にはなかったものです」車両盗難の傾向を把握するために、日本はもちろん海外の情報にも目を配る。東南アジアでは実際に盗まれた車両の調査を行い、北米では警察や保険会社を訪ねた。ただしどれだけ情報を得ても、最後に必要なのは担当者の想像力なのだという。
    「どんな新しい手口で攻めてくるのかは、自分の感性を研ぎ澄まして想像するしかありません。この仕事には教科書がないのです。そこが難しいところであり、やりがいでもあります」
    山中たちの努力により、英国のサッチャムという保険協会のランク付けでは、日産車の防犯性能は最上位にランクされている。
    「私たちの仕事の成果はなかなか表に出ません。だから世界で最も厳しいとされるサッチャムで高く評価されるのは、嬉しいですね」
    愛車を盗まれるということは、そこに詰まった思い出も失ってしまうということだ。そんな悲しみをひとつでも減らすために、山中は今日も未知の手口に備えている。

    1)盗難防止には、電子的に異常を察知する方法と構造を工夫する方法のふたつがある。山中が担当するのは後者で、写真はドアの内側からロック解除の容易性をチェックしているところ。2)一見、普通のフロントグリルだが、手や工具が侵入できないよう工夫されている。3)「YAMANAKA」のサインが入った工具箱。
    ただし収められているのは、クルマを“壊す”ための工具だ。

    4)モニター画面で3D画像をチェックする山中。部品の3D画像は360度回転させてチェックできる。
    5)ドアの鍵穴への侵入を防ぐために開発した部品。

    ※本記事は2012年10月3日時点の情報を元に作成されております。