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    日産の匠たち。 文:サトータケシ 日産の匠たち。 文:サトータケシ

    TAKUMI 松本忠成 Tadanari Matsumoto TAKUMI 松本忠成 Tadanari Matsumoto カスタマーパフォーマンス&CAE・実験技術開発本部
    カスタマーパフォーマンス&車両実験部 コンポーネント信頼性実験グループ

    1977年に入社。車体の強度や剛性を実験する部署を5年ほど経験した後、現在の職となり国内外の車種を担当。「最初の部署で、車体の構造を叩き込まれたことがよかったです。実車を見て覚えたことで、水の浸入経路などが理解できるようになりましたから」。世界市場の動向を掴むために世界洗車機ショーの展示会や市場調査に行くという。

    コンピュータ技術と積年の経験で、原因を突き止める名医。 コンピュータ技術と積年の経験で、原因を突き止める名医。

    ドア内部の水浸入経路を特定するためにファイバースコープでパネル板組みを調査し、モニター画面に映った内部の様子を確認。まるで、その姿は内視鏡で臓器を検査する医師のようだ。

    松本忠成の仕事は、水や埃が車内に浸入するのを防ぐこと。専門的な言葉を使えば、気密性を高めるためのシール性実験を担当する。水漏れについては、世界中で高水圧の洗車機が増えたことで、以前より高い水準が求められるようになったという。

    松本の仕事は、車体の構造を3D化したデジタル画像の確認から始まる。彼の強みは、この画像を見ただけで水漏れの可能性を指摘できることだ。

    「金属板同士が組み合わされる部分の段差が大きければ、0.5ミリ単位で指摘します。ゴムが使われている部分は、ゴムの経時劣化を想定して水漏れを防止します」

    試作車が完成すれば、水を流して水漏れの有無を確認する。難しいのは「水が浸入する場所と水が漏れる場所が離れている場合」だという。ここで車外に水を排出する経路を熟知した松本が、積年の経験を駆使して水の浸入箇所を特定する。コンピュータの3D画像技術と、人間の感性の共同作業だ。松本は、「水漏れしないのはあたりまえの性能ですが、日産の技術は世界的にみてもトップレベルです」と胸を張る。まさに、コンピュータの診断データと触診で病原を突き止める、匠の技術である。

    ※本記事は2016年8月3日時点の情報を元に作成されております。