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安心・安全を追求して 日産の情熱。 開発、物流、販売、点検、整備。クルマにまつわるあらゆる工程には、たくさんの人たちが関わっています。その存在は表立ったものではないかもしれません。しかし、安全性を徹底的に確かめ、より「いいクルマ」をつくり、魅力と安心感を提供し、お客さまに喜んでいただきたいという一人ひとりの情熱こそが、日産を支えているのです。今回の特集では、日産のフィロソフィをご紹介します。 写真:殿村誠士、山田健太郎 文:大隅祐輔、清水雅史(モンキープロダクション)

完成したクルマは市場に出ると、さまざまな道を走り、多くの人に使われる。
お客さまが感じる小さな不満や気になることを発売前に修正し、購入後により満足いただけるための努力をする。

より“いいクルマ”にする、
トレーニングのような実験。

お客さまが気になる部分を先まわりして発見、改善し、クルマ開発の最後を守る。
サッカーにたとえると、ゴールキーパー的な存在が、車両信頼性実験部である。

 クルマを購入いただき、しばらく使っていただいたあと、お客さまに「いいクルマだな」と感じてもらうにはどうすればいいのだろうか。
 乗る人は皆、違う視点をもっている。ゆえに"いいクルマ"は一言で定義することができない。逆の言い方をすれば、さまざまな人が求めていることにしっかりと応えられるクルマづくりのため、クルマの開発最終段階で、扱いやすさ、走り、安全性といったあらゆる点で不具合がないかを入念に確認するのが「初期品質」だ。高い品質を保つために必要不可欠なものである。

不安を拭い去るための、
あらゆる状況下の実験。

 日産は試作車を用いて、さまざまな環境下での実験を行っている。そのなかでも、とりわけ重要度の高いものを紹介していく。
 クルマは日々、いろいろな道を走っている。もし万が一、ゲリラ豪雨にあってしまったら、冬に凍結してしまったら安全なのか。どんな事態にも耐え得るクルマこそ、「いいクルマ」だと、日産の実験部のメンバーたちは考えている。
 モーターやバッテリーなどの電子部品を大量に搭載する電気自動車には、水害にあったら漏電しないか、雨の日の充電中に感電したりしないか、といった一般的なイメージが未だにある。それを払拭するためにいままで数多くの実験を行ってきた。
 そのひとつが、大胆にも水が深くたまった冠水路での実験だ。クルマを水中で走行させ、水による感電や漏電が発生しないかの安全性を評価・確認する。同時に、水圧による車両各部品の破損を防止するための評価も実施し、それぞれの結果を検証することで、事前の不具合を徹底的に取り除く。

冠水実験 クルマを高い速度で冠水路を走らせる実験。感電や漏電の安全性を設計の段階からしっかりと評価・確認し、未然に防げるように対策をとる。

 また、積雪の実験も行う。日産リーフはガソリン車と比較すると、およそ1/10の熱量しかなく、ボンネットの内部に雪が入り込み凍結してしまうと、トラブルを起こしかねない。この対処もまず図面のチェックからはじめ、雪が入らないかを調べる。試作車ができあがると、積雪の再現環境を実験室内につくり、一晩中放置し、経過を確認していく。そのほか、TV・ラジオ放送の基地局やレーダーなどの電波塔から放射される電波との干渉を確かめる実験もある。クルマが電波を直接受ける環境下での影響を確認する。
こういった初期品質のためのトライ&エラーを積み重ね、強くなったクルマがお客さまの元へと届くのである。

遭遇するかもしれない万が一に備える、
発売前に行われる入念なチェック

積雪実験 日産リーフは熱量が少ないため、雪がボンネット内部に入るとトラブルを起こしかねない。実験では雪が降るなかにクルマを一晩置き、侵入を防げているかを確認している。
電波実験 いまの世の中はさまざまな電波で満ちている。クルマも電波の影響を受ける。電波の干渉によってクルマにトラブルがないか、電波を直に受けるこの実験によって確かめている。

お客さまが「いいな」と感じる感性を理解、共感し、クルマの細部に反映させる。
パーシブドクオリティ(感性品質)部は、そんな難題と日々向き合ってクルマの開発を進めている。

直感的にクルマを「いい」と思ってもらう、
さりげない工夫。

クルマを一目見て、触って、使って、「いいな」という印象を抱くことは皆あるだろう。
直感的な好印象をお客さまにもっていただくため、細部にまで気を配り、人が感じる質感を高めている。

試作車をつくる前に車両のデジタルデータを使い、感性品質による評価を行う。
この写真は、それまでに挙がった懸念点がきちんと解決されているかどうかを、デジタルデータで確認をしているところ。

  日産にパーシブドクオリティという部署がある。"perceived"という英語の直訳は"感じられる"となる。つまり、クルマに乗る人、または見る人にどう感じてもらいたいかを考え、より"いいクルマ"をつくることがミッションだ。
 彼らの仕事はデザイナーとともに進められる。デザイナーはまず、理想的なデザインのモデルをつくる。それをパーシブドクオリティ部が客観的な視点で、どうすれば使い勝手がよく魅力的なデザインになるかを提案する。

お客さまとデザイナーが求めているものを両立させるという使命。

右:セレナに求められるのは、視界の広さ。
外から車体を見た時でも、その印象が伝わるよう、サイドウィンドウをギリギリまで延ばしている。

左上:バックドアのガラス面とその縁にも工夫が。角がシャープなもの(=ガラス)と丸いもの(=縁)を組み合わせることで、違和感なくまとまる。
左下:キャップレスの給油口は機能性とデザインにこだわった。

 セレナのバックドアは、ガラス部分だけでも開閉できるデュアルバックドアになっている。それによって、狭い駐車場や後ろのクルマから距離が近い時でも開けられるようになったが、開発当初、ガラス部分を開けるためのボタンをどこに設けるかが問題として挙がった。パーシブドクオリティ部の担当者は、何度も図面にいろいろな線のパターンを引き、日産エンブレムのなかに仕込む策を見つけることができた。バックドアの外側に余計なものを追加せずに、荷物の出し入れもしやすいこの機能は、すっきりとした見栄えも実現したのだ。

ボンネットからヘッドランプ、Vモーショングリルへと流れるように構成されたフロントフェイスのデザイン。無駄な凹凸をなくしシャープにするために、シームレスというキーワードのもとでつくられた。

ガラス面だけを開くことができるデュアルバックドア。日産エンブレムの下部に手を入れ、ボタンを押し開く仕組みになっているため、現在の日産のラインアップのなかで最も大きなエンブレムになった。

 もうひとつのこだわりは、ダッシュボードに設けられているボックスだ。触ると硬いのだが、印象はどこかやわらかで優しい。それを演出しているのが、張られている淡いカラーの素材とふたの縁の丸みである。これは、印象に対するデザインの工夫でもあり、お客さまに縁の角でケガをさせないための気配りでもある。

やわらかな素材を採用したダッシュボードのなかに、硬質なシルバーで縁取られたエアコンの送風口(左側)をレイアウトすることで、さらに高級感あふれる車内を演出。

夜間はランプが描くラインがクルマのアイデンティティになる。セレナのテールランプの一部にはLEDが採用されており、そのラインを均一に輝かせることもこだわったポイント。

高級で華美なだけが、品質が高いクルマではない。

 このようなさりげない工夫は、マーケティングなどの調査によって生まれている。パーシブドクオリティ部ははじめに、セレナのお客さまとして想定される人物像についてイマジネーションを膨らませる。たとえば、家電や家具のデザインや風合いなど、その人が普段の生活でどんなものを使い、好んでいるかを入念に調べる。お客さまがどう感じるかを把握し、それに共感することが重要だ。これらの分析を経て、お客さまのライフスタイルとマッチするクルマへと仕上げていくのだ。

パーシブドクオリティ部が手がけるパーツは、クルマに搭載される前、正しくつくられているかをチェックするために模型化される。机上のものはダッシュボードの模型。

 また、彼らは世界中で開催されるモーターショーに欠かさず訪れているため、一部分だけで、どのクルマのどのモデルかがすぐにわかるぐらい、他社のクルマに関しても詳しい。
 パーシブドクオリティ部は、品質が高いクルマ=高級で華美なクルマとは考えていない。クルマを運転する人、乗車する人が直感的に「いい」と思えるもの、安心感を覚えるもの。それが彼ら、そして日産が考える、高品質なクルマの在り方なのである。

過酷な使用環境においても、お客さまが快適に乗り続けられるよう高品質を保つ。
塩害耐久実験や強度実験、日照付恒温槽での日射・高温・低温実験などで耐久性や強度を確認している。

優れた耐久性の実現に向けた、
数々の実験。

お客さまにできるだけ長く、快適に乗り続けてもらうために。
日産はさまざまな角度から耐久性のチェックを綿密に行っている。

 すべてのお客さまに、できるだけ長く、快適な状態で使っていただきたい。日産ではそんな思いから、開発段階において、優れた耐久性の実現に必要な設計とは何か、そしてその妥当性を適切に確認するにはどのような確認行為(=実験)が必要かを検討し、日産車の耐久品質の向上に取り組んでいる。そのひとつが、時間の経過とともに生じる劣化を見極める塩害耐久実験だ。

塩害耐久実験 塩水噴霧室と湿潤室を交互に行き来させるほか、塩が含まれた塩泥路も走行。短期間で「クルマの一生分」となる使用状況を再現し、錆の発生の有無を確認。

錆びることのないクルマづくり。

 塩害耐久実験は、空気中や水に含まれる成分によって金属が腐食する現象、つまり“錆”に対する耐久性を評価・確認する実験である。そして長期間使用後の「錆にくさ」を評価するため、腐食を早く起こさせる特別な試験方法により、短期間に数年先の劣化状態の再現を狙う。
 具体的には、錆の発生を促すために最も適切な濃度の塩水をクルマに吹きかける塩水噴霧室や、まるでサウナのような高温多湿の湿潤室に試作車を置くような条件を、何度も繰り返す。さらにテストコース内の水溜まり路面や砂利路を何度も走行する。これらの実験は世界的に塩害に厳しい地域を想定して設定されている。
 このような規定の試験が完了した試作車は、金属パネル一枚一枚をバラバラにし、錆が発生していないか隅々まで確認する。万が一、想定より早く錆びた場合は、材質を見直したり、構造を変更するなどの対策を行う。

錆の原因となる塩水を溜めたテスト路を走行。冬の寒冷地や降雪地では、凍結防止の融雪剤を道路に撒くが、その成分には塩分が含まれている。

 塩害耐久実験のようにクルマの劣化を抑え、耐久品質を向上させる努力とともに重要なのが「強度の確認実験」である。ある特定の条件下で、タイヤに大きな力が加わった時に、変形したりする部品がないかの確認がその代表例である。
 たとえば歩道と道路の段差や駐車場の縁石などにうっかり強く乗り上げてしまった時、足回りにダメージを受けてまっすぐに走らなくなってしまうことがないよう、確かめている。
 塩害耐久実験や強度実験で確認しているのは、日産車なら備わっていてあたりまえの品質。日常の使用では感じ取りにくいものかもしれないが、このような品質の向上にも実直に向き合っているのである。

日常のちょっとしたアクシデントでも、走行に影響しないよう強度を確かめる。

強度実験 路上でしばしば遭遇する縁石や歩道と道路の段差などに乗り上げたり、タイヤを当ててしまった時、クルマにトラブルがないよう強度を確認。

1.思いのほか勢いよく段差に乗り上げてしまい、ハッとしたことはないだろうか。縁石や路面の凹みなどを見落として、クルマの直進性や走行性能に影響を与えたりしないよう、足回りの強度についてさまざまな場面を想定して確認を行っている。

2.雨の降る日や雪道でクルマがスリップし、タイヤが歩道の段差にぶつかった時の再現。

3.深い側溝に落ちたときの再現。

炎天下から極寒まで、耐え得る品質を実現する。

 耐久性のチェックは錆だけにとどまらない。炎天下や極寒の環境下における使用で、クルマの内外にわたってどのような劣化が起こるかについても、専用の施設のなかで実験を行っている。それが日照付恒温槽での日射・高温・低温実験だ。
 クルマには温度変化や紫外線の影響を比較的受けやすい樹脂やゴム素材が採用されているが、日照付恒温槽では太陽光による紫外線や温度上昇の影響のほか、低温による劣化の様子を確認している。さまざまな地域を想定でき、灼熱のアリゾナや零下40℃にもなるロシアも、現地に出向かずとも再現できるのだ。同じ条件で何度も行えるため信頼度を高められるのも、こうした実験のメリットである。

日射・高温・低温実験 クルマの内外装に用いられる樹脂やゴム、繊維製品について、太陽光による紫外線や温度上昇による劣化と、低温による部品の変形や破損などを日照付恒温槽で確認。
日射 炎天下に停めたクルマのハンドルが熱くて触れない経験は多くの人にあるだろう。日射実験ではダッシュボードの表面温度が100℃以上にもなり、過酷な環境での変形などをチェックする。
低温 日照付恒温槽では、零下40℃までの低温実験を行うことができる。想定した環境下での正確な評価には低温を保ったままクルマを確認する必要があるため、担当者は防寒具に身を包んで作業を行う。

 劣化の確認は、外装においては樹脂製バンパーやヘッドライトレンズのひずみをはじめ、グリルやエンブレムなどのメッキ部品も検査の対象となる。さらに室内ではダッシュボードやドアトリム、フロアカーペット、スイッチ類など多岐にわたり、最近では先進安全装備のためにフロントウィンドウ上部に設置されたカメラのカバーも検査項目に加わった。実験の結果は塩害耐久実験と同じように、変形や破損を防ぐ対策についての適切な提案とともに、設計へフィードバックされる。
 これらの実験の評価は、寸法の計測など決められた評価基準に沿って行われる場合以外に、変形や破損など、劣化の有無を担当者自身が判断することも多い。
 パネルのひずみや波打ち、変色といった見た目の違いを目視で評価するほか、手で触り、たたいたりすることによるチェック、さらには不快な異臭がないかなどを、人の感覚を頼りに評価していくのである。それゆえ実験の担当者には高い経験値が求められるわけだが、日産車の優れた品質は熟練の技にも支えられているのである。

空調実験

日射と低温の環境が再現できるという点において、日照付恒温槽と似ている低温日射実験室は、エアコンの性能評価に使用される。日産には多様な地域の気象条件やクルマの使い方に合わせた実験が行える施設が整えられている。

お客さまのクルマに対する困り事に徹底的に向き合う。
いかなる不具合でも開発・生産、サプライヤーが集まり、原因を突き止め、改善策を導き出す。

不具合の原因を探りすばやく正す、FQC(フィールド・クオリティ・センター)の活動。 不具合の原因を探りすばやく正す、FQC(フィールド・クオリティ・センター)の活動。

世界各国で走る日産車の品質改善に取り組むフィールド・クオリティ・センターは
17カ国におよび、海を越え、互いに連携しあっている。
厚木にある同センターでは、日々改善を続け、不具合の発生を減らしている。

実車調査エリア 部品単体による不具合の再現が難しい場合、回収した部品を実車に取り付け、再現を行う。エンジンや駆動系に関するものでは、この場所での分析が主になっている。

 お客さまに安心かつ快適に日産のクルマを使い続けていただくために、市場で起きた不具合にいかに迅速に対応するか、そして、さらなる改善に努めているのが、フィールド・クオリティ・センター(以下、FQC)である。

山積みの部品に、新しい答えがある。

 まずFQCでの仕事の流れを紹介していきたい。はじめに、国内外の販売店で受けたお客さまからの車両へのご指摘や、どのようなときに不具合が起きたかの条件、テクニカルスタッフによる診断内容など品質改善する上で必要な情報を集め、細かな確認作業からスタートする。その内容は、パワーウィンドウの昇降時に音がする、バンパーの塗装にキズがある、減速時にブレーキから音がする、エアコンが効かないなど、さまざまだ。

4軸加振室 各市場で想定されるクルマの走行状況、地形を模したシミュレーター。走行時に左右バランスを維持することで発生するきしみ音などを測定している。

 内容の確認が終わると、不具合部品を実際に車両に取り付け、必要があればテストコースにクルマと部品を持ち込み、再現を行う。そこで、部品に原因があるとわかれば、すぐに関係者がFQCに集まり、全員で改善策を練り、新しい部品に変更する。そして、車両の生産ラインに速やかに導入するのと同時に、全国の販売店にもその変更した情報を発信していく。
 FQCの行っている活動は、そのクルマの部品を改善するだけではない。原因を徹底的に究明し、根本を正し、将来のクルマで二度と同じことが起こらないようにするのである。

品質改善に欠かせない、5つのフェーズ

不具合部品を回収、不具合現象の共有、対策案の立案、解決と対策、再発防止
グローバルで不具合情報を共有

FQCが誕生した当初は日・米・欧の開発拠点のみだったが、現在は中南米、アフリカ、アジア圏の計17カ国・19カ所まで広がる。日本で展開がないモデルにも共用されている部品があるため、他国の情報もリソースになる。

 神奈川県厚木市に位置している広々としたFQCの空間には常時、世界中からさまざまな部品が届き、不具合をチェックする人、議論しあう人が行き来している。
 地道に不具合をひとつひとつ解決するために、関係者が強固に連携し、意識を高めて取り組んでいく。これがFQCの真髄であり、日産車の質を高めていくのだ。

完成した車両は全国へ輸送され、オプショナルパーツの取り付け、納車整備を経て、販売会社へと届けられる。
その間にキズを一切つけないための細かな作業基準が、日産の物流を支えている。

工場から出荷された状態のまま、
お客さまの元へ。

丹精込めてつくられるクルマ。完成した車両は、検査や走行テストなどのさまざまな品質保証が行われ、工場から出荷される。
しかし品質への取り組みは、そこで終わりではない。

工場やサービスセンターの路面が割れていないかなど、道路環境も定期的に点検・補修を行う。些細なことでトラブルが起きないよう、未然に防ぐことを心がけている。

 国内の日産車は栃木、追浜、九州などの工場で生産される。それぞれから出荷されたクルマは、全国に張り巡らされた物流ネットワークを通じ、各地のサービスセンターへ輸送され、最終整備・チェックが行われたのちに、各販売店よりお客さまへ届けられる。
 クルマの品質を保つため、物流の各工程には細かな基準を設けている。クルマの停め方、扱う人の服装、乗り降りの方法、さらにはキーの車内設置場所にまでルールが存在するほど、徹底した管理がされている。
 お客さまのクルマを販売店へお届けするまでの、品質の最後の砦とも呼ばれているサービスセンター。オプショナルパーツの取り付け、最終の品質チェックなど、ほとんどの作業は人によって行われる。各サービスセンターの担当者が、マニュアル通りにきちんと取り組み、クルマに対しての確かな知識と技術をもつことが重要である。
 一日に輸送される日産車の台数は二千台以上。丹精込めてつくられた、その一台一台のクルマは、工場から出荷された状態のまま、お客さまの元に届けられる。

サービスセンターに車両が到着すると、洗車、オプショナルパーツの取り付け、納車整備が行われる。人が一連の作業をするため、各拠点の担当者が同じ目をもち、ルールを順守することと、クルマの構造に対しての確かな知識と熟練した技術をもつことが重要である。

車両は一時的に外に保管される。そのため、自然が運んでくる塵にも注意を払わなければならない。

左:塵からクルマを守るために張られた防風ネット。
右:影響がなかったかどうか、運ばれる直前まで人がチェックを行う。

お客さま一人ひとりと親身に向き合い信頼関係を築くことで、接客での付加価値を生み出す。

お客さまの要望を汲み取り、
接客の付加価値を高める。

「愛車の点検」「修理」「買い替えの提案」。
これらの窓口になるのが、販売店に勤めるカーライフアドバイザーだ。
甲斐日産 ミルカイト店のカーライフアドバイザー深澤千賀子が接客において心がけていることとは。

同店には快活な女性のカーライフアドバイザーが多く勤めており、お客さまをいつも明るく出迎え、見送る。皆、日産車が大好きでクルマの勉強にも余念がない。新型車が店舗に届くと、まずスタッフ全員で乗り、すべての機能を試しながら特徴を学ぶ。お客さまにどんなことを尋ねられても答えられるように、準備を怠らない。すべてはお客さまに喜んでいただくためだ。

甲斐日産 ミルカイト店
カーライフアドバイザー

深澤千賀子

ミルカイト店のオープン時から勤務しているスタッフ。それ以前は別の接客業をしていたが、クルマ好きが高じて転職し、現在に至る。お客さまのお子さんの名前や年齢まで把握するなど、ていねいな仕事を心がけている。

 カーライフアドバイザーの仕事は、お客さまとのアポイントの確認、準備をはじめ、来店時のお出迎え、入庫と続く。それらの合間に車検・点検が近づいた他のお客さまに連絡を取ったり、突然の来客の応対をする。
 慌ただしく過ぎる一日のなかで深澤が大切にしていることは、ていねいな接客。できるだけたくさんの会話をし、お客さまの理解を深める。「お客さまは基本的に、クルマの点検など、必要な時しかお店に来られませんし、その時間も限られています。どんな暮らしをして、どんな趣味があるのか。そして、何を望まれているかをしっかり把握するために、短い時間でもフランクな会話をし、仲を深めていく。その結果、お客さまと信頼関係が生まれて、後々に出てくるご要望を尋ねやすくなるのです」
 日産の点検・修理は、その内容をテクニカルスタッフから説明することがスタンダード。しかし深澤は、そのすべてを託すのではなく、お客さま一人ひとりに、わかりやすい言葉で伝えることに重きを置く。そういった親身な応対が、高い付加価値をもたらす。

クルマの整備に必要なのは知識と技術だけではない。
テクニカルスタッフはお客さまの応対も行うため、高い人間力を求められる。
それを育む場が日産・自動車大学校でもあり、日産サービス技術大会でもある。

その先のお客さまを感じながら、
技術力を磨く。

日産が誇るサービスの徹底。その源は、日産・自動車大学校や日産サービス技術大会といった、
スタッフの技術力・人間力を向上させる育成プログラムにある。

日産・自動車大学校 クルマの構造、整備技術、お客さま応対の基礎を学ぶための専門学校。それぞれをただ学び、資格を得るだけではなく、学生に自主的・主体的な行動を促すことに、近年重きを置いているのが特徴だ。

 クルマの点検・整備を担うテクニカルスタッフの使命は、「お客さまの立場になり、一度で正しく直すこと」。そのために必要となるのが、仕事に対する姿勢、より高い技術力を得たいという気持ちだ。テクニカルスタッフの多くは日産・自動車大学校で、新旧さまざまなクルマをもとに基礎を学ぶ。学校の大きな目的は、自動車整備士としての国家資格を学生全員に取得させ、どの現場に立ったとしても役立つ社会人に育てあげること。しかし、それ以上に重要視されているのが、学生の自主性を育むことである。
 そのための取り組みのひとつとして、KONDOレーシングとの共同プロジェクトがある。このプロジェクトは、学生がチームのひとりとして関わり、実際のレースの現場に立つことができるのだ。また、 2017年、横浜校にサーキットでの実習を中心としたモータースポーツ科を新たに設け、レースにおける深い知識を得られるカリキュラムをつくった。いずれも強制ではなく、志願した学生にだけチャンスを与えているのが特徴だ。現在の教育モットーは、一人ひとりの自主性・主体性を重視することにより、学生のやる気を引き出すこと。それによって人間力がしだいに高まり、「お客さまの立場になり、一度で正しく直すこと」にやがてつながっていくのだ。

学生の自主性を育むため、近藤真彦監督率いるKONDOレーシングとのプロジェクトやカート大会といった取り組みも行っている。校内はとても活気的で、訪問者が来たら学生全員が挨拶を欠かさない。学校ではなく、“楽校”になることを目指している。

特色の異なる5校

2016年まで同じだった5校の学科構成は、栃木校にスポーツメカニクス科、横浜校にモータースポーツ科、愛知校にマスターメカニック科、京都校にカスタマイズ科を新設するなど、それぞれの特徴を出し、変化し続けている。

日産京都自動車大学校、日産栃木自動車大学校、日産横浜自動車大学校、日産愛知自動車大学校、日産愛媛自動車大学校

意識を高める、
技術大会というきっかけ。

 一方、すでに従事しているサービススタッフのモチベーションをさらに上げることも重要だ。長年続く日産サービス技術大会は、サービス品質の底上げと同時に、サービススタッフたちの意識を変える役目も果たす。
 前年に全国9会場で開催するブロック大会で選抜された選手が、翌年の全国大会に出場できる。その選手は、全国の販売会社から選ばれた精鋭たち。大会が近づくと、猛特訓に励む。その結果、大会が終わると、優勝、入賞に関係なく競い合ったチーム同士の間に一体感が生まれ、関わったすべての人たちに「成長させてもらった」「お客さまの笑顔のためにという気持ちが強くなった」という感謝の気持ちが芽生える。次の大会もチャレンジしたいという向上心とともに業務への意識変化がこの大会によって生み出される。

全国日産サービス技術大会 1966年にスタートし、長年にわたり日産グループが総力を挙げて取り組んできた大会。販売会社のテクニカルスタッフ・テクニカルアドバイザーが技術力、応対力を競い合う。

競技内容は問題部位の特定や原因の見極め、必要部品の交換、修復までを行う。特に近年はクルマの電動化が進んでいるため、電気系の問題解決には高い診断スキルが必要になってきている。

入賞することはかけがえのない喜びになり、次の目標を見定めるいいきっかけにもなる大会。

このような、長期にわたるサービススタッフの育成プログラムが、日産のサービス向上を支えている。