多様な個性、文化が交わることで生み出される日産のグローバルデザイン。世界4カ国で働く、個性的なデザイナーの素顔をのぞいてみましょう。
写真:エイミー・セイリッグ、渡邊美佐、谷井 功 文:稲石千奈美、香川道子、和田達彦
アメリカ、イギリス、中国、日本にある日産のデザインセンターは、互いに対等な立場にある。基本的に、新モデルのプロジェクトは同時進行で、コンペを勝ち抜いたデザインが採用される。各センターのデザイナーたちは、みな日産の未来を担うデザインをつくるという自負をもって働いている。
移り変わりの激しいニーズに迅速に応えるため、クルマの開発期間は短縮化される傾向に。その要求を満たすため、各センターには、デザイナーが自由に発想し、新しい試みに挑戦する環境が整えられている。たとえば、デザインを3Dデータ化して世界中でやりとりし、同じモックアップが同時制作できるなど、デザインを具現化する工程をスピードアップ。こうすることで、デザイナーがアイデアを練る時間が削られないように工夫が施されている。
各センターで働くデザイナーの国籍はさまざま。個性や、彼らのバックボーンにある文化が出合い、交わることで、ユニークで、新しいカーデザインが生み出されるのだ。
学生時代からカリフォルニア州に住むジオバーニは、自分の仕事を「日産という大きな船を小さなスピードボートで先導する役」と語る。彼はいままで「日産アルティマ」や「日産マキシマ」などの北米市場で重要な市販車を手がけてきた。「最近は毎日が忙しいから家でくつろいだり、大好きなビリヤードを思う存分プレイするのが夢かな」とおどけてみせた。
アートスクールを卒業後、NDAに入社。日産リバイバルプランの期間にも数々のプロジェクトに参加。現在は後進デザイナーの指導にもあたる。スタジオの休憩所にビリヤード台がある。
ジオバーニお気に入りの場所だ。
2012年のジュネーブ・モーターショーで発表された「インフィニティ エマージ」を手がけたベルギー出身のバート。物静かな口調ながら、カーデザインへのこだわりと情熱は相当のもの。休みには気分転換で美術館や公園を訪れたりするが、つねに頭の中ではデザイン・インスピレーションを探求していると語る。
デザインチームの同僚とジョークを飛ばし、リラックスしたりして頭の切り替えをする。チームワークはバッチリ。
コンセプトカー「インフィニティ エマージ」は、レンジエクステンダーEVのスポーツカー。ドイツのベストショー・カー大賞などを獲得し、話題をさらった。
台湾出身のキューは、アメリカで自動車デザインを学び、カーデザイナーとして活躍した後、中国に渡り日産に。約2年前に入社して以来、新しいモデルのデザインに意欲的に取り組んでいる。「クルマは移動する芸術品」という彼。休日にはアンティーク店や美術館巡りをすることでさまざまなデザイン、文化に触れ自らの感性に刺激を与えている。
ミーティングなどを行うサロンは、キューに限らずスタッフみんなのお気に入りの場所。昼休みなどに、ここのテーブルで卓球をするのが何よりの楽しみだとか。
「新しい、コレだと思えるものを思いついた時、そしてそれをカタチにしていく過程にやりがいを感じます」と言う佐藤。勤務して約14年になるが、街で自分が携わったクルマを見かけると、ついチェックしてしまう。初代フェアレディなどの旧車が好きで、いつかは往時のスタイルを現代的にアレンジしたクルマをつくってみたいと考えている。
2002年の東京モーターショーで発表されたコンセプトカーの「BeeLine」。佐藤が手がけた初のコンセプトカーだけに思い出深い。
外の風が感じられるデッキテラスで気分転換。天気のいい日はここでお弁当を食べたりもする。
※本記事は2013年5月23日時点の情報を元に作成されております。